「雨漏りの修理を検討してるけどどのくらいの費用がかかるの?」
雨漏りが発生した際、修理業者に依頼せずにその場しのぎの応急処置で済ませている方も多いです。
いつか修理を依頼しなきゃなと思いつつも、「いくらかかるの?」「そもそもどこを直せばいいの?」といった疑問を持ちながら後回しにしてしまっている方も多いのではないでしょうか。

1級建築施工管理技士
山本 悠太
2013年に株式会社竹中工務店に入社し、9年間施工管理業務に従事。高層マンションなど大規模建築を担当。在籍中に1級建築施工管理技士取得。
2022年より大阪府吹田市のリフォーム会社 加藤装飾株式会社へ入社。住宅から病院・店舗など様々なリフォーム工事の施工管理に従事している。
雨漏りは、放っておくと被害が拡大し、建物の内部構造や内装にも大きなダメージを与える可能性があります。
だからこそ、早めの対処が大切ですが、同時に「適正な費用感を把握しておくこと」も非常に重要です。
本記事では、雨漏り修理にかかる費用を「調査費用」「修繕費用(一次被害)」「内装修繕費用(二次被害)」の3つに分類し、それぞれの相場や注意点をわかりやすく解説します。
雨漏り修理費用の全体構成と相場
雨漏り修理にかかる費用は、実は一括で「〇〇円」と言えるものではありません。
なぜなら、雨漏りの発生原因や建物の構造、被害の広がり方によって、対応がまったく異なるからです。
まずは、雨漏りに関して一般的に発生する費用の構成を知っておきましょう。費用は主に、以下の3つに分類されます。
- 調査費用
- 一次被害の修繕費用
- 二次被害の修繕費用
「一次被害の修繕費用」とは雨漏り発生箇所を修理する費用で、「二次被害の修繕費用」とは室内へ入り込んだ雨水により被害を受けた内装部分の修繕に関する費用です。
これらの項目について、その内容と費用相場を詳しく見ていきましょう。
調査費用の内容と相場
雨漏り修理の第一歩は、「どこから水が入っているのか」を正確に突き止めることです。
原因が特定できなければ、修理しても再び雨漏りが発生してしまうリスクがあるため、調査は非常に重要な工程といえます。
調査方法にはいくつか種類があり、それぞれにかかる費用も異なります。
以下では、代表的な調査方法とその費用相場について解説します。
目視調査(無料~1万円程度)
目視調査は、屋根や外壁、室内の天井や壁のシミなどを直接見て、雨漏りの可能性がある箇所を確認する調査です。
目視調査は主に見積り作成のための簡易的な調査で、雨漏りの概要や建物の特徴などを把握し、本格的な調査の方法や適切な修繕方法などを検討するために行われます。
軽度な雨漏りや、明確な原因箇所が見えるケースでは、この方法で十分な場合もあります。
多くの修理業者では、「現地調査無料」をうたっている場合が多く、無料で対応してもらえるケースが一般的です。
散水調査(無料~30万円程度)
散水調査は、実際にホースで水をかけながらどこから水が侵入するかを調べる方法です。
再現性が高く、雨が降ったときと同じ状況を作り出せるため、目視では特定しにくい原因の特定にも有効です。
費用相場は無料~30万円程度と幅があり、簡易的に済ませられる場合は費用を抑えられますが、足場を設置する必要がある場合は費用が上がる傾向にあります。
注意点としては、ご自宅の水道を使用するため、水道代は別途で発生します。
赤外線カメラ調査(10万~50万)
赤外線サーモグラフィーカメラを使って、建物内部の温度分布から水分の侵入箇所を特定する方法です。
目に見えない構造内部の異常を捉えることができ、非破壊で調査できる点が大きなメリットといてるでしょう。
調査費用は10万~50万円が相場で、専用機材を使用して撮影するほか、画像解析など専門的なスキルも必要なため費用が高くなります。
内視鏡・ドローンなどの調査(5万円~15万円)
状況によっては、内視鏡(ファイバースコープ)やドローンによる調査を行う場合もあります。
視鏡(ファイバースコープ)は天井裏を調査するときに使用し、ドローンは高所や人が立ち入りにくい場所に使用します。
費用相場は5万円~15万円程度で、これまでに紹介した調査と併用して行われることが一般的です。
雨漏り修繕(一次被害)の費用相場
雨漏りの原因箇所が特定されたら、次はその部分の修理を行います。
この段階を「一次被害の修繕」と呼び、雨水が直接侵入してくる屋根・外壁・ベランダ・天井などの構造部分を修理する工程です。
修繕内容や部位によって費用は異なりますので、代表的なケースごとに費用目安をご紹介します。
屋根の修理費用(~30万円程度)
雨漏りの発生原因で最も多いのが屋根です。台風や経年劣化によって屋根材がズレたり、棟板金が浮いていたりすると、そこから雨水が浸入します。
修理方法と費用相場としては、以下のようなものがあります。
- 瓦やスレートの差し替え・補修(~10万円程度)
- 棟板金の交換(~20万円程度)
- 漆喰の補修(~10万円程度)
小規模な補修であれば数万円程度で済みますが、劣化箇所が多かったり足場が必要だったりする場合は30万円を超えることもあります。
ベランダの修理費用(~40万円程度)
ベランダの防水層が劣化すると、床面から雨水が建物内部へ浸入してしまいます。
一般的には、防水シートの貼り替えや防水塗装などが行われます。
- ウレタン防水(~20万円程度)
- FRP防水(~30万円程度)
- 塩ビシート(~20万円程度)
- 排水口清掃(~3万円程度)
- コーキングなど部分補修(~5万円程度)
ベランダの面積が広いほど費用も高くなりますが、排水口の詰まりが原因の場合は、比較的安価に済むケースもあります。
関連記事:ベランダからの雨漏り修理費用はいくらかかる?原因や修理方法別の価格相場を徹底解説!

外壁の修理費用(~30万円程度)
外壁のひび割れやコーキングの劣化からも雨水は侵入します。
そのため、サイディングやモルタル壁の補修、シーリングの打ち替えなどが必要になります。
雨漏り箇所だけの部分補修であれば、30万円程度まで済むことが一般的です。しかし、足場の有無や、補修面積によっては費用がアップする傾向にあります。
内装修繕(二次被害)の費用相場
雨漏り修理は、雨水が侵入する原因となる屋根や外壁を修理すれば終わりというものではありません。
浸入した水が室内に達してしまうと、天井・壁・床などの内装にまで被害が広がり、見た目の損傷だけでなく、カビや腐食といった健康や建物の寿命に関わるリスクを引き起こすこともあります。
これらの二次被害を修繕するための費用相場を紹介します。
関連記事:雨漏りの代表的な6つの二次被害を解説!雨漏りが疑われる症状も紹介
天井クロス・ボードの張り替え(3万円~15万円程度)
雨漏りによって天井にシミやたわみが生じた場合、クロス(壁紙)の張り替えや石膏ボードの交換が必要です。
軽度であればクロスの張り替えのみで済みますが、下地のボードが劣化・カビの発生などがある場合は全面交換が求められることもあります。
関連記事:雨漏りした天井の張り替え費用を紹介!費用を抑える方法も解説
壁紙・壁材の修繕費用(3万円~15万円程度)
天井から流れ落ちた雨水が壁を伝って染み込むことで、壁紙の剥がれ・浮き・変色が発生した場合、修繕が必要となります。
被害が軽度な場合はクロスの張り替えのみで済みますが、石膏ボードや木材が腐っている場合は全面修復が必要になる場合もあります。
床材・フローリング補修の費用(5万円~30万円程度)
床下まで雨水が侵入した場合、フローリング材や床シート材が膨張・変形したり、カビが発生したりする可能性があります。
また、床下の断熱材や根太などの構造材に被害が及ぶと、補修範囲が大きくなり、費用も高額になる傾向があります。
大規模な修繕が必要なケースと費用相場
雨漏りが長期間放置されていた場合や、建物全体の劣化が進んでいる場合には、部分的な補修では対応しきれず、大規模な修繕工事が必要になることもあります。
ここでは特に多い「屋根」「外壁」「屋上」に関する大規模修繕の費用目安を解説します。
屋根の全面塗装・葺き替え・カバー工法(50万~200万円程度)
- 屋根塗装(~50万円程度)
- カバー工法(~150万円程度)
- 葺き替え(~200万円程度)
屋根全体が老朽化している場合、部分補修をしても別の箇所から雨漏りする可能性もあるため、屋根全体の葺き替えなどフルリフォームが推奨されます。
既存屋根の種類や工法によって費用が異なりますが、屋根は面積が大きいため費用も高額になる場合が一般的です。
外壁の全面塗装(~200万円程度)
- 30坪(~100万円程度)
- 40坪(~130万円程度)
- 50坪(~160万円程度)
- 60坪(~200万円程度)
外壁の劣化によって雨水が浸入するケースでは、ひび割れや目地の補修だけでなく、外壁全体を塗り直すことで防水性を回復させる必要があります。
防外壁塗装の耐用年数は10~20年とされており、そのタイミングで外壁の塗りなおしが必要です。
塗料のグレードや塗装面積、足場の数量により費用は異なりますが、100万~200万円程度が相場となります。
屋上の全面防水(~180万円程度)
- ウレタン防水(~100万円程度)
- FRP防水(~150万円程度)
- シート防水(~180万円程度)
- アスファルト防水(~100万円程度)
屋上は、床全体に防水層が施工されているため、劣化により雨漏りが発生します。
部分補修で修復できることもありますが、経年により劣化している場合は全面防水が推奨されます。
防水の種類や面積にもよりますが、1㎡あたり1万円~2万円程度が相場となります。
雨漏りの主な原因とは?原因別の費用感を紹介
雨漏りの原因は大きく分けて3つに分類されます。
- 施工不良
- 経年劣化
- 自然災害
雨漏りしたタイミングにより、おおよその原因が推測でき、原因ごとに修理費用が異なります。
ここでは、雨漏りの主な原因と、原因別の費用感を紹介します。
また、費用を抑えるための補助金制度なども原因別に解説します。
原因1:施工不良
施工不良とは、住宅を新築及びリフォームする際、施工ミスなどにより雨漏りが発生する場合です。
施工不良の場合は、経年劣化などが進んでいないことが想定されるため、費用相場としては50万円程度までで納まることが一般的です。
施工後年数がたっておらず、かつ自然災害など外的要因が無い場合は、施工不良の可能性があるため、無料修理を行えるかもしれません。施工した業者に問合せをしてみましょう。
原因2:経年劣化
経年劣化による雨漏りの場合は、部分補修ではなく全面改修が必要となる可能性があります。
雨漏りが発生した部分だけ補修したとしても、その他の部分から雨漏りが再発する可能性も考えられるでしょう。
仮に、全面改修が必要となる場合は、50万~200万円程度とかなり高額な修理費用が発生する場合があります。
お住まいの地域によって補助金が下りる可能性もあるため、調査してみましょう。
原因3:自然災害
台風などの風災、大雪などによる雪災、雹による雹災によって建物が損傷し、雨漏りが発生する場合があります。
損傷具合や、築年数などにより費用は大きく異なりますが、自然災害が原因の場合は火災保険を適用できる可能性があります。
加入する保険の種類によりますが、損害保険鑑定人による現地調査などにより承諾を得られれば保険を適用することが可能です。
火災保険や補助金で修理費用を抑える方法
雨漏り修理は、場合によっては数十万円〜100万円以上の出費になることもあるため、経済的な負担を感じる方も少なくありません。
しかし、状況によっては火災保険や自治体の助成金制度を利用して、費用の一部または全額をカバーできるケースもあります。
知らずに全額自己負担してしまう前に、以下の制度についてぜひ確認しておきましょう。
関連記事:雨漏りで火災保険が適用される条件を解説!実際の手順や事例を紹介

火災保険が適用される条件と対象例
「火災保険」と聞くと火事のための保険と思われがちですが、実際には風災・雪災・水災など自然災害による被害も補償対象となっています。
雨漏りもその一環で、たとえば次のようなケースでは補償が受けられる可能性があります。
- 台風や強風によって屋根の一部が破損し、そこから雨漏りが発生した
- 落雪による屋根材の破損
- 突発的な強風で外壁の一部がはがれた
ただし、「経年劣化」や「施工不良」が原因の場合は保険の対象外となるため、原因の特定が非常に重要です。
火災保険申請の流れと注意点
火災保険の申請は、以下のような流れで進みます。
- 損害発生(雨漏りを発見)
- 保険会社または代理店へ連絡
- 修理業者による調査・見積書の作成
- 損害状況の写真・書類を提出
- 保険会社の審査・承認
- 修理
- 保険金の振込
注意点としては、修理を始める前に申請することが挙げられます。
勝手に修理を進めてしまうと、保険会社から「現状確認ができない」と判断され、補償対象外になるケースもあるため注意が必要です。
雨漏りに助成金や補助金は使用できる?
地域によっては、住宅の雨漏り修理や耐震・省エネ改修などに対して助成金制度を設けている自治体もあります。
制度の内容は自治体によって異なりますが、雨漏りの修理工事単体に使用できる補助金ではなく、バリアフリーや省エネ化のリフォームを行う際に結果的に雨漏り修繕もできるといった場合に適用されることが一般的です。
例えば、下記のような事例です。
- 屋根からの雨漏り修理のために、耐震性の高い屋根に変更した
- サッシ回りからの雨漏り修理のために、断熱サッシを施工した
このような場合、耐震に関する補助金や省エネに関する補助金を受けられる場合があるため、修理業者の方に相談してみましょう。
自分で雨漏り修理はできる?DIYの可否と注意点
雨漏りを発見したとき、「なるべく費用をかけず、自分でなんとか直せないか」と考える方も多いのではないでしょうか。
ホームセンターやネットショップなどで、防水テープやコーキング材など、雨漏り補修用の道具を購入し、応急処置を行うことは可能です。
しかし、DIYによる修理は軽度なケースを除き、あまりおすすめはできません。この章では、DIYについてメリットデメリットなどを解説します。
DIYで対応可能なケース
DIYやご自身での対処が可能なのは、次のような「表面的かつ軽度な不具合」に対する応急処置です。
- どこから雨漏りしているか明確
- 雨漏りしている箇所が手の届く
このように、雨漏りの原因が明確であり、高所や屋根の上にのぼるといった危険作業を伴わない場合に限りご自身で対処は可能といえるでしょう。
例えば、サッシ回りのコーキングが劣化して水が侵入していることが明らかな場合は、ホームセンターでコーキング材を購入してご自身で打ち直すことは可能です。
ただし、見えない内部に原因がある場合は、DIYでの対応がかえって被害を悪化させることもあるため注意が必要です。
また、あくまでご自身での対処は一時的なものですので、被害が広がらないように速やかに専門業者へ修理を依頼することをおすすめします。
DIYのメリット・デメリット
雨漏りをDIYにより修理する場合は、以下のようなメリットとデメリットが挙げられます。
- 修理費用を抑えられる
- すぐに対処できるため、被害を最小限に抑えられる
- 原因の特定が不正確だと意味がない
- 応急処置に過ぎず、根本解決にならない
あくまで応急処置に限り有効ですので、被害が広がって修理費用がアップすることが無いように早急に専門業者へ連絡することをおすすめします。
信頼できる雨漏り修理業者の選び方
雨漏り修理業者を選ぶ際、様々なことに注意する必要があります。
適当に業者を選定してしまうと、高額な請求をされたり、雨漏りが再発したりと様々な問題が発生する可能性があるため、注意が必要です。
ここでは、信頼できる雨漏り修理業者の選び方について解説します。
業者の探し方
雨漏り修理業者の主な探し方は3つです。
- ハウスメーカー
- リフォーム会社
- 雨漏り修理専門業者
ハウスメーカーに依頼する場合は、施工不良が疑われる場合に依頼することが一般的です。
経年劣化などが疑われる場合は、お抱えのリフォーム会社などに依頼すると良いでしょう。
知り合いのリフォーム会社などがなく、どこに頼めばよいかわからない場合は雨漏り修理業者が加盟するサービスに依頼すると良いでしょう。
お住まいの地域や雨漏りの症状などにより、複数業者を紹介してもらえるため最短で相見積もりをそろえることが可能です。
以下の記事で、おすすめのサービスを紹介していますので、参考にしてみてください。
関連記事:雨漏り修理業者おすすめランキング5選!1級施工管理技士が徹底解説
正しい業者選びの流れ
- 専門業者へ相談
- 現地調査・診断
- 見積り書の提出
- 相見積もりの徴収
- 施工業者の確定
修理業者へ相談する際、1社ではなく複数業者へ依頼することをおすすめします。
現地調査の立ち合いなど手間がかかりますが、適正価格にて修理を行うためには相見積もりが必須です。
見積がそろった段階で、見積り書を比較し、項目の抜け漏れが無いか確認したうえで施工業者を確定しましょう。
雨漏り修理費用を正しく理解して適正価格で修繕しましょう
雨漏りは、「今すぐには困らないから」と後回しにしがちなトラブルですが、実際には放置することで被害が拡大し、修繕費用も高額になる可能性があります。
本記事では、雨漏りの修理にかかる費用構成や費用相場、価格を抑えるための火災保険や補助金などについて網羅的に解説を行いました。
雨漏り修理を適正価格で行うためには、下記の3つが重要です。
- 費用の構成を理解する
- 早めの対応がコストを抑える
- 信頼できる業者と一緒に進める
不安や焦りに流されず、ぜひ本記事の内容を参考に、安心してご自宅の対処を進めていただければ幸いです。期発見・早期修理と定期的なメンテナンスが、住宅を長持ちさせ、修理費用を抑える最大のポイントです。